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高松高等裁判所 昭和58年(行コ)5号 判決 1984年7月04日

控訴人

X

右訴訟代理人

O

被控訴人

宿毛市長

林遉

右訴訟代理人

林一宏

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五六年一一月二八日に控訴人に到達した納税通知書(番号第四〇〇二号)をもつてなした控訴人に対する昭和五六年度市民税県民税金八四万一六六〇円の課税処分を取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二  主張

当事者双方の主張は、次に訂正・付加するほか、原判決事実欄第二摘示のとおりであるから、それを引用する。

一  原判決三枚目裏一一行目の「請求原因1は認める。」の次に、「ただし、控訴人に対する本件処分は、後記被控訴人の主張3のとおり納期限前になされた。」を挿入し、原判決六枚目表五行目から六行目にかけて「これを快よく受領して納税されたい旨懇請した」とあるのを「受け取るよう強く要請した」と改め、同枚目表九行目の「再び」を「同年一一月二五日」と改める。

二  原判決事実欄第二の四(被控訴人の主張に対する認否)の3につき、次の主張を付加する。

昭和五六年六月の納税通知書返戻の件は、高知県砂利有限会社(以下高知県砂利という。)の事務員山本繁子が控訴人のいないときに右納税通知書在中の郵便を受け取つたものの、控訴人の出社の日が分らなかつたから右郵便物を宿毛市役所に持参し、控訴人の住所に送るよう申し入れたものであり、控訴人は本件訴え提起後山本に聞いて初めてそのことを知つた。また、同月一五日ごろ高知県砂利を訪れた宿毛市役所の係員と控訴人が話し合つたのは昭和五五年度の県市民税のことだけで、昭和五六年度の県市民税のことは話題にのぼらず、係員から控訴人が昭和五六年度分の納税通知書の提示を受けたこともなかつた。

第三  証拠<省略>

理由

一請求原因1の本件課税処分の存在及び不服申立て経由の各事実は、当事者間に争いがない。

二そこで、本件処分が違法であるとする控訴人の各主張について判断する。

1  控訴人の住所について

(一)  <証拠>を総合すると、次の事実が認められる(控訴人が高知県砂利に勤務していること、控訴人の妻A子が高知市に居住していること、控訴人と甲野B子との間の子として甲野太郎がいることは、当事者間に争いがない。)。

(1) 控訴人は、大学の経済学部を中退し、高知県庁に六年、南海電鉄株式会社に七年勤めた後宿毛市で砂利採取販売業を始めた。その事業の必要上、控訴人は、昭和四六年に高知市から宿毛市に住民基本台帳上の住所を変更し、事務所で寝泊まりし、土曜日曜に時々妻子のいる高知市の自宅に帰つていた。そのうち控訴人は事務員として雇つていた甲野B子(以下B子という。)と関係を持ち、B子は昭和四七年一二月三日控訴人との間の子甲野太郎を生み、控訴人はB子を宿毛市内に妾として囲つた。

(2) 昭和四八年控訴人は妻A子及び知人の林淳とともに四〇〇万円を出資して高知県砂利採取有限会社(高知県砂利の旧商号)を設立し、その本店を宿毛市に置き、法人化して砂利採取販売業を始めた。その本店は設立当初同市宿毛二五八一番地にあつたが、昭和五一年四月一五日同市二ノ宮一一六番地の現在地に移転した。控訴人は、同年一〇月一七日、それまで同市宿毛九八番地にあつた住民基本台帳上の住所を右本店所在地の同市二ノ宮一一六番地に移した。

(3) 控訴人は、昭和五三年五月ごろ、共同経営者の林淳と不仲になり、高知県砂利の高知県に対する砂利採取許可申請につき高知県から意見を求められた宿毛市長林遉(林淳の兄)が許可不相当の意見書を出したことがあつた。結局、高知県は高知県砂利の右申請を許可したが、控訴人は今もつて林遉市長の右処置が不公平で許せないと考えている。

(4) 控訴人は住民基本台帳上の住所を、昭和五四年一二月二六日B子の姉の夫で高知県砂利に勤めている甲川某の一家の住む高知県幡多郡大月町大字弘見一六八三番地に変更したが、昭和五五年一月八日には元の宿毛市二ノ宮一一六番地に戻し、同年七月三〇日再び大月町大字弘見一六八三番地に変更し、昭和五五年度分の市県民税の賦課期日の同年一月一日現在の控訴人の住所は大月町にあると主張して宿毛市に右納税することを拒否した。なお、昭和五四年度まで控訴人は宿毛市に市県民税を納付してきた。

(二)  <証拠>を総合すると、次の事実が認められる(B子と太郎が宿毛市大深浦二三四番地九〇に居住していること、昭和五六年一月一日現在の控訴人の住民基本台帳に登載された住所が高知県幡多郡大月町大字弘見一六八三番地であつたことは、当事者間に争いがない。)。

(1) 昭和五五年二月二日大月町の税務課から宿毛市税務課に、控訴人に対しては宿毛市に課税権があると思料する旨の付せん付きの控訴人の給与支払報告書が転送されてきた。そこで、宿毛市税務課の係員が調査してみたところ、昭和五五年度の市県民税の賦課期日の同年一月一日現在の控訴人の住民基本台帳上の住所は高知県幡多郡大月町にあつたが、控訴人は、そこには居住しておらず、会社の仕事で出張するときなどを除きほとんど前記B子及び同女との間の子太郎と宿毛市大深浦二三四番地九〇で生活していた。そこで被控訴人は地方税法二九四条三項、四一条により、同年六月八日ころ同所に控訴人の昭和五五年度の市県民税の納税通知書を送達した。ところが、控訴人は、同年七月大月町に同年度分の市県民税を納付したので、宿毛市税務課係員が大月町の係員と協議した結果、大月町は控訴人の納税金を誤納として還付することになつた。宿毛市税務課長前﨑弘が同年一〇月控訴人に会つて同年度分市県民税を宿毛市に納付するよう説得したけども、控訴人は林遉市長がいる限り宿毛市に納税をしたくないと言つて説得に応じなかつた。

(2) 宿毛市税務課では昭和五五年一〇月、昭和五六年の四月と五月大月町弘見の甲川某方と宿毛市のB子の各隣人に面接して控訴人の居住の有無を調査したところ、どの調査結果でも、控訴人は大月町弘見の甲川方に居住せず、宿毛市のB子方で生活していた。そこで被控訴人は、大月町と協議のうえ、昭和五六年度分の市県民税の賦課期日の同年一月一日現在の控訴人の住所は宿毛市にあると認定し、同年六月八日ころ控訴人に対し昭和五六年度分の市県民税の納税通知書をセロハンの窓あき封筒に入れて高知県砂利気付で郵送したところ、翌九日高知県砂利の事務員山本繁子が、控訴人は会社には居住していないから返してこいと言われてきたと言つて右郵便物を未開封のまま宿毛市役所税務課に持参したので、同税務課でそれを預つた。同月一五日同税務課長前﨑弘と同課長補佐乾正範が高知県砂利に赴き、控訴人に対し昭和五五年度分及び同五六年度分の市県民税を納付するよう説得し、昭和五六年度分の納税通知書を手渡そうとしたが、控訴人はこのときも、林市長がいる間は宿毛市には納税しないと言つて説得に応じず、右納税通知書を受け取ろうとしなかつた。

(3) 宿毛市税務課住民税係長江口日出男が昭和五六年八月二八日高知市の控訴人宅で妻A子に会い、控訴人の帰宅の程度を聞いたところ、A子は主人だから一年に一、二回帰ることはあるわね、と答えた。

(4) 昭和五六年一一月二四日にも宿毛市税務課長前﨑弘と同課長補佐乾正範が高知県砂利に控訴人を訪問し、預り保管中の同年度分の納税通知書を手渡そうとしたが、そのときも控訴人は、林市長がいる間は宿毛市に税金の納入はできないと言つて、それを受け取ろうとせず、書類は大月町の甲川方に送るように言つた。そこで、被控訴人は、やむをえず右両名に命じて翌二五日大月町の甲川方へ納税通知書を持参させて控訴人に受け取つてもらうこととし甲川方で送達し控訴人は甲川を経てこれを受け取つた。

以上のとおり認められ、<反証排斥省略>他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(三)  <証拠>を総合すると、高知県砂利の本店所在地の社屋は二階建で、風呂場もあり炊事や寝泊まりができる部屋があること、控訴人は、会社の右炊事場で自炊して朝食をとることがあり、その後片づけや昼食の用意を事務員山本繁子らがしていること、被控訴人は、風呂は会社で入り、会社で寝泊まりすることがあることが認められる。

(四)  控訴人は、毎週土、日曜日には高知市の妻子の下に帰つていたと主張し、当審証人西内弘子、同山本繁子、同甲川C子及び原審・当審で控訴人本人は、右主張に副う供述をするが、前記(二)(3)の控訴人の高知市の自宅への帰宅の程度についての宿毛市税務課住民税係長の質問に対して控訴人の妻A子が帰宅するのは年にわずかである旨の答えをした事実に照らし、右の各供述はたやすく措信できず、控訴人が昭和五六年一月一日当時どの程度高知市の自宅に帰つていたかは本件全証拠によつても明らかでない。

(五)  以上の(一)ないし(三)認定の各事実を総合すると、控訴人が本妻のいる高知市の自宅に帰つていた程度は明らかでないが、控訴人は、昭和四六年に高知市から宿毛市に住民基本台帳上の住所を変更してから宿毛市を中心として生活し経済活動をしてきたものであつて、その後住民基本台帳上の住所とした高知県幡多郡大月町に居住した形跡はないのであるから、昭和五六年度分の市県民税の賦課期日である同年一月一日現在、控訴人の生活の本拠ないし場所的中心である住所は宿毛市大深浦二三四番地九〇のB子方にあつたとみられるとともに、控訴人経営の高知県砂利の本店所在地の社屋には炊事や寝泊まりのできる部屋があり、控訴人が右社屋で食事をしたり風呂に入り泊ることもあつたことにかんがみると、高知県砂利の社屋のある同市二ノ宮一一六番地が控訴人の居所であつたとみることができるもので、控訴人が昭和五五年度分及び同五六年度分の各市県民税の賦課期日の一月一日現在の住民基本台帳上の住所を大月町にしたのは、深く反感を持つ林遉が市長をしている宿毛市に納税をすることをきらつて、形だけ住所を変更したものと認めるのが相当である。<反証排斥省略>

そうすると、昭和五六年度分の市県民税の賦課期日の同年一月一日現在の控訴人の住所は高知市にあるという控訴人の主張は失当で被控訴人のとつた措置に違法はない。

2  住民基本台帳の訂正について

当裁判所も、この点に関する控訴人の主張を失当であると判断するが、その理由は原判決理由三の説示と同じであるからそれを引用する。

3  納期限について

前記1の(五)で認定のとおり、高知県砂利の社屋のある宿毛市二ノ宮一一六番地は控訴人の居所というべきであるから、被控訴人が控訴人に対する昭和五六年度分の市県民税の納税通知書を同年六月八日高知県砂利気付で郵便で送達した行為は適法であり、控訴人に対する納税の告知は郵便集配人が遅くとも翌九日右納税通知書を高知県砂利で事務員に交付したときに完了したものというべきである。地方税法二〇条によると納税通知書は納税義務者の住所、居所にあて送達できるのであるから控訴人の方でその受領を拒否しても送達の効力に消長はないというべく、本件処分が納期限後になされたから違法であるという控訴人の主張はその前提を欠き失当である。被控訴人が重ねて大月町で送達したのは控訴人がその受領を拒否したためやむを得ずとられた措置であるに過ぎない。

4  そうすると、本件処分の違法をいう控訴人の主張はすべて失当であり、本件処分は適法になされたものというべきである。

5  なお昭和五六年六月九日控訴人に本件納税通知書が送達されたとみると控訴人の本件異議申立は法定の期間経過後で不適法でないかという疑問が生ずる余地があるがこの問題は争点となつていないのでこれを不問とする。

三よつて、控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(菊地博 滝口功 渡邊貢)

《参考・原判決理由》

〔理由〕

一 <省略>

二 原告の住所について

原告が宿毛市二ノ宮一一六番地所在の高知県砂利に勤務していること、原告の妻A子が高知市西久万一七一番地に居住していること、原告とB子との間の子として太郎があり、B子と太郎が宿毛市大深浦二三四―九〇番地に居住していること、昭和五六年一月一日現在における原告の住民基本台帳に記録された住所が高知県幡多郡大月町大字弘見一六八三番地であることの各事実は当事者間に争いがない。そして、右の事実に、<証拠>を綜合すると、原告には妻A子のほかに、愛人(妾)B子があり、原告とB子との間の子として太郎(昭和四七年一二月三日生、昭和五〇年一月一六日原告認知届出)があるところ、原告は、昭和五五年四月ころから引き続き宿毛市大深浦二三四―九〇番地において、B子及び太郎と同居し、同所を生活の本拠として同所から勤務先である宿毛市二ノ宮一一六番地所在の高知県砂利に通勤していることが認められる。原告は、その本人尋問において、昭和五六年一月一日当時、住民基本台帳に住所として記録されている大月町に起居して同所から高知県砂利に通勤し、毎週土、日曜日には高知市西久万一七一番地に居住する妻A子の許に帰つていたので原告の住所は右高知市内にあり、宿毛市内にはなかつた旨右認定に反する供述をするけれども、<証拠>によると、原告は、右大月町には全く起居しておらないし、また、高知市内に居住する妻A子の許には一年に一、二回程度しか帰つていないことが認められるのであるから、原告本人の前記供述部分は<証拠>に照らして到底措信できない。他に、前記認定を覆すに足りる証拠はない。

以上のとおりであつて、昭和五六年一月一日現在における原告の住所は宿毛市内にあつたことが明らかであるから、同市内に原告の住所があるとしてなされた被告の本件処分は適法である。

三 住民基本台帳の訂正について

原告が昭和五五年一月一日及び昭和五六年一月一日現在においていずれも前記大月町の住民基本台帳に記録されていたこと、被告が原告に対し昭和五五年度の市県民税の課税をし、続いて昭和五六年度の市県民税の課税(本件処分)をしたことは当事者間に争いがない。ところで、市町村民税の納税義務者で市町村内に住所を有する個人とは、住民基本台帳法の適用を受ける者については、当該市町村の住民基本台帳に記録されている者をいう(地方税法二九四条一項及び二項)のである。しかし、当該市町村の住民基本台帳に記録されていない個人が市町村内に住所を有する者である場合には、その者を当該住民基本台帳に記録されている者とみなして、その者に市町村民税を課することができる(同条三項)のである。そして、<証拠>によれば、右のみなし課税をする場合には、同時に住民基本台帳の訂正のための措置をとらなければならない旨の記載及びみなし課税をした場合において、次年度からは、住民基本台帳の登録を届出又は職権により変更すると思われるので、あくまでも住民基本台帳への登録が絶対要件となり、住民基本台帳に記録されている市町村のみが課税できるものと解すべきであるかのような記載がある。なるほど、住民基本台帳制度の趣旨に照らすと、みなし課税をした場合には、同時に届出又は職権でみなし課税をした当該市町村の住民基本台帳に納税義務者を記録するような措置をとり、次年度以降はその記録に基づいて課税することが望ましいことはいうまでもないが、右の措置がとられなかつたからといつて、そのことにより現に住所を有する市町村の課税権が消滅するものとは前記地方税法二九四条二項及び三項の規定に照らして到底考えられず、右措置がとられないまま次年度を迎えた場合にも、同法二九四条二項及び三項の規定に従い、再びみなし課税をなし得ると解するのが相当である。のみならず、本件において、被告は、住民基本台帳に記録されている大月町の町長と協議し、被告に課税権があることを相互に確認したうえ、原告に本件処分たる課税をしていることは<証拠>により明らかであるから、二重課税のおそれも全くないのである。従つて、本件処分は適法であつて、原告主張のような違法は認められない。

四 納期限について

本件処分である納税通知書が原告に到達した昭和五六年一一月二八日現在において、第一期分から第五期分までの分について、いずれも既に納期限を徒過していたことが明らかである。

ところで、納税通知書は、納税者が納付すべき地方税について、その賦課の根拠となつた法律及び当該地方団体の条例の規定、納税者の住所及び氏名、課税標準額、税率、税額、納期、各納期における納付額、納付の場所並びに納期限までに税金を納付しなかつた場合において執られるべき措置及び賦課に不服がある場合における救済の方法を記載した文書である(地方税法一条一項六号)。そして、地方税を賦課するについて、これが普通徴収の方法によつて徴収する場合(本件処分はこれにあたる。)には、徴税吏員が右納税通知書を納税者に交付する方法によつてなされるものであつて(同法一条一項八号)これにより賦課額を具体的に確定するとともに、その履行を請求する効果を有するものである。このように納税通知書記載の納期限は、納税義務者にとつて、前納報奨金の利益を受け又は納期限に完納しなければ延滞金が加算される等の不利益を受ける基準日となるものであつて、地方税の賦課処分において課税権者、納税義務者にとつてともに重要な意味をもつものであるから、各納期限のうち一部の納期限がその期限を徒過した後に納税通知書が交付されたときは、これによる課税処分は違法となるといわざるを得ない。しかして、本件処分は、その納税通知書交付時において、第一期分から第五期分までの分について、いずれも既に納期限を徒過していたことは前記のとおりである。しかしながら、<証拠>によれば、原告は、林遉宿毛市長を嫌い、同人が市長を勤めている限り宿毛市に納税をしたくないとの感情をいだいていたこと、被告は、遅くとも昭和五六年六月九日原告に到達した郵便で原告に対する昭和五六年度の市県民税の納税通知書を原告の勤務先である宿毛市二ノ宮一一六番地所在の高知県砂利内の原告宛に発送したこと、この郵便はいわゆる窓開きの封筒であつて市県民税の納税通知書が在中していることが外見から確認できるものであつたこと、原告は、右封書を一旦受領したうえ、これを開封しないまま、同日高知県砂利の女性事務員を使者として同封書を宿毛市役所税務課へ返したこと、そこで、被告は、同月一五旨、税務課長前﨑弘、同課長補佐乾正範の両名を前記高知県砂利に派遣し、原告に対して、右納税通知書を提示してその受領方を申入れたが、その受領を拒絶されたこと、更に、被告は、原告が任意に納税してくれることを期待し、前記前﨑弘外一名を原告の希望する前記大月町大字弘見一六八三番地甲川方に派遣し、本件処分の納税通知書を同所の家人に交付させたこと、被告は、原告からの本件処分に対する異議申立に対し、原告の心情等を考慮し異議申立期間経過後の異議申立として処理することなく、調査のうえ異議理由がないとして異議申立を却下する旨決定をしたものであることの各事実が認められ、右認定に反する原告本人の供述部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。右の事実によると、本件処分時に納期限を徒過するに至つた経緯については原告側にも責められるべき点がないとはいえないので、この点と前記認定の諸事情とを綜合考慮すると、本件処分における前記納期限の徒過については本件処分を取り消さなければならないほどの違法事由があるとはいい難い。

五 よつて、本件処分は正当であつて原告の主張するような違法はなく、この取消しを求める原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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